30代後半から基礎体温が高めになってくるかたが、けっこう見受けられることがあります。
卵巣機能の弱りや原始卵胞が減ってきていることなどで、FSH(卵胞刺激ホルモン)の分泌が盛んになり、基礎体温は相対的に上がってきます。
また、HCGや黄体ホルモンなどのルテアルサポート(黄体補充療法)などをしていれば、基礎体温表は全般的に高くなってきます。
低温期は、36・5度前後、高温期は 37・0度前後くらいになります。
もっと高い人もいます。
(内容的には「不妊治療の基礎知識…現状と問題点(5)」にも関連してきます)
高温期の生理前に、毎晩寝汗をかいてパジャマを交換しなければならなかったり、火照りがひどくなる人もいます。
通常は、従来の漢方相談では「陰虚火旺(いんきょかおう)」といいまして、おじいちゃん、おばあちゃんの「茶飲み友達」のような、手足の裏が火照りやすいタイプに多かったのですが、不妊治療や更年期を前にして、プレ更年期とでも言うのでしょうか、「基礎体温が上がってくる」「口渇」「のぼせ」「ほてり」「痩せ」「お肌の乾燥」「基礎体温の月経周期が短くなってくる」かたの相談を多く見られるようになってきています。
その場合には、従来型の「冷え性」の漢方相談ではなくなってくるのです。
なんとかして、基礎体温表が高めのほてりを鎮めて、「卵がサウナ状態の子宮で妊娠しづらくならないように」処方を検討していくことになります。
一般的には、
○陰虚(いんきょ)
○陰虚火旺(いんきょかおう)
これは、陰虚(いんきょ)がよりひどくなったもの。
○実熱(じつねつ)
○気鬱化火(きうつかか)
○血熱(けつねつ)
○淤血(おけつ)
子宮内膜症、子宮腺筋症など。
このような感じの「証」に分類されると思います。
さて、今回このコラムを作ろうと思い立ったのは、今朝「2ヶ月の服用で妊娠できました」という報告を見まして、うーんと思ったからです。
この女性のかたは、以前にPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)とも言われて、2人目不妊で基礎体温ばバラバラ。
当帰の漢方薬(当帰芍薬散)や人参湯なども服用したことがある。
低温期 36・5~36・6度
高温期 36・8~36・9度
排卵日が分からない。
おりものはほとんど無い。
胃腸が弱くて食べ過ぎると下痢をする。
体調が悪かったり冷えると便がゆるくなる。
ふくらはぎから下が冷える。
排卵痛があって、生理痛はありません。
などありました。
これは私のメモ書きですので、漢方処方はこれを飲めば良いという説明ではないのですが、(一応断り書きです)、血府逐淤丸(けっぷちくおがん)と水快宝(すいかいほう)という「基礎体温が高めの漢方考察」をしたわけです。
血府逐淤丸や水快宝とも、温性(おんせい)ではなくて、やや涼性(りょうせい)または平性(へいせい)ですので、必要以上に体を温めて、これ以上に基礎体温を上げたりすることなく、活血化淤(かっけつかお)をメインにして、妊娠しやすい環境になれば…ということが功を奏しました。
(「周期療法における活血化淤の応用」も参考にしてください)
やはり不妊症の子宝の漢方相談は、基礎体温表でしっかりと弁証(べんしょう)することが基本ですね。
子宮内膜症|不妊治療と漢方薬こちらのコラムも参考になりましたら、幸いです。
<2007年5月20日 岩手県金ケ崎町 1本の道>