昨日の平成20年5月17日に鉄鋼会館で京都の足立病院不妊治療センター副院長であり、京都大学医学部非常勤講師の婦人科医・中山貴弘先生の講演を聞くチャンスに恵まれましたので、復習の意味も重ねて、このブログに書いていきたいと思います。
○不妊の原因
胚が子宮に着床できない(着床障害)
原因
黄体機能不全 →機能不全
子宮筋腫・ポリープ →器質的な着床障害
子宮腔内癒着 →器質的な着床障害
子宮内膜が薄い
○ポリープによる着床障害
☆正常の着床は、胚が子宮内膜にサンドイッチ状にはさまれる。
☆ポリープによる着床障害は、ポリープにより隙間ができて着床しづらくなる。
子宮内膜と胚が会話することができない。
子宮内膜と胚が接することができない。
○着床障害による治療
ホルモン補充
ポリープ摘出
癒着剥離
ファイバースコープによる観察
○ヒステロファイバースコープ像(子宮内膜ポリープ)
正常の子宮腔
ポリープのある子宮腔
ファイバースコープ後は、自然妊娠する可能性が高いので、体外受精はすぐには行わない。
生理食塩水などを灌流しながら検査するので、子宮内膜がきれいになって妊娠しやすくなる。
(ヒステロファイバースコープは、子宮鏡検査です)
○過排卵+人工授精+通水、FTカテーテル、ファイバースコープ
最も強力な一般治療です。
両方の卵巣より沢山の卵子を排卵させる。
頸管をバイパスして、子宮腔に精子を注入させる。
○一般不妊治療の目標と方法
☆卵胞を育てる→排卵誘発剤
☆卵管の通過性を良くする→子宮卵管造影
☆排卵と性交のタイミング指導→超音波検査、排卵検査薬
☆精子を効率的に卵管に送る→人工授精
☆良好な黄体機能を維持する→ホルモン補充療法
☆着床の障害物を除く→ヒステロファイバー
☆精子と卵子の出会いの確立を上げる→過排卵+人工授精(10~15%の妊娠率)
○一般不妊治療が無効である不妊原因
☆ピックアップ障害
卵子が取り込まれない。
☆受精障害
受精しない、充分量の運動精子があるが、精子が透明帯を通過できない。
受精には、精子のCapacitation(先体反応)が必要
○不妊治療ではStep Up ステップアップが必要です!
異常なし、ホルモン分泌異常→タイミング療法、ホルモン補充療法
精子異常、排卵障害→人工授精、過排卵刺激
卵管閉塞、重度精子異常、原因不明不妊→生殖補助医療(IVF-ET)(ICSI)腹腔鏡
より高度な生殖補助医療
凍結融解胚移植
卵管内胚移植
胚盤胞移植
2段階胚移植
AHA(アシステッドハッチング)
…アシステッドハッチングは、極論を言えば、誰に実施しても問題が無く、全員に行えると中山先生はおっしゃっていました。
胚のふ化を助けるので、「やって損はない」そうです。
ハッチングとは:
良好な胚を移植しても、なかなか着床しないような場合、いろいろな原因が考えられる。
その一つが、胚のハッチングがうまくいかないことが原因ではないかと考えられています。
ハッチングというのは、ふ化という意味です。
ニワトリの卵からヒヨコが殻を破って出てくることを、ハッチングといいます。
人の胚も同じように、周りが透明帯という膜様の殻で囲まれているのですが、それを破って飛び出して、子宮の内膜と結合して着床が成立します。
その透明帯を破って外にうまく出られない場合があり、それを助けるのがアシステッドハッチングと呼ばれます。
(以上は、「体外受精ガイダンス」133ページから引用させて頂きました)
<2008年5月21日 鉄線(クレマチス)>
「生殖補助医療の有用性と限界(3)」次はこちらのコラムです。