<2008年5月30日 虎の門ニッショーホール>
こんばんわ、土屋です。
本日の10時からの第七回日本不妊カウンセリング学会が始まり、先ほど18時半に終了しました。
たくさんの発表があり、熱のこもった集会でした。
私が参加した演題一覧です。
<困難な事例へのアプローチ>
A01:がん治療中にARTを受けた患者とのかかわり
聖路加国際病院 女性総合診療部
A02:生殖医療における至適ケアを提供するためのTriage(トリアージ)を利用した患者難治度識別ツールの開発と活用の実際
蔵本ウイメンズクリニック
A03:9回目のAIHで第一子を得た後43回のAIHを経て初回IVF-ETにより継続妊娠に至った一例
豊橋市民病院 総合生殖医療センター
A04:体外受精により得た子どもへの思い─リスクを伴った児であった2事例
園田学園女子大学人間看護学科
A05:意思決定に関する支援について
─遺伝疾患をもつ家族がいたことに不安を生じながら意思決定を行った事例より─
長野市民病院
豊橋市民病院総合生殖医療センター
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<不妊男性とカウンセリング>
A06:当院における男性不妊に対しての試み
慈芳産婦人科
A:07 不妊専門クリニックにおける、男性性機能障害患者へのカウンセリングの実際と問題点
木場公園クリニック
A08:行政による不妊相談には何が求められているか─男性に対する支援を考える─
名古屋大学大学院医学系研究科産婦人科学教室
愛知県不妊専門相談センター
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<不妊治療と夫婦(カップル)関係>
A09: 不妊治療が性交渉に与える影響についての検討
聖路加国際病院 生殖医療センター
A10:不妊治療を受けるカップルの親密さと主観的健康度の関係についての検討
永井クリニック
A11:不妊治療と夫婦の絆(きずな)─不妊治療を望むカップルとの関わりを通して見えた夫婦の絆の形成の一事例
トータルライフケアサポートどりいむ
割田助産院
A12:不妊治療は夫婦関係崩壊の原因となるか
聖路加国際病院 女性総合診療部・生殖医療センター
A13:生殖医療のカップルアセスメント~子どもをめぐる関係性のカウンセリング~
立命館大学衣笠総合研究機構人間科学研究所
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<不妊地治療の結果と心理>
A14:当院において妊娠反応陽性となった不妊症患者とその転帰の年齢別検討
豊橋市民病院総合生殖医療センター
A15:不妊症女性が受診しやすい環境を提供できたのか─外来フロアー移転にあたって─
豊橋市民病院総合生殖医療センター
A16:流産・死産のグリーフケア:母親と医療スタッフの捉え方
岡山大学病院産科
岡山県不妊専門相談センター
岡山大学大学院保険学研究科
…
<特別講演>
「より良い患者医療者関係を目指すコミュニケーション教育の現在」
名古屋大学医学部附属総合医学教育センター 植村和正
<会長講演>
「顕微鏡内蔵型受精卵動画記録培養装置が切り拓く生殖医療の未来図」
豊橋市民病院 総合生殖医療センター
…
<シンポジウム>
「夫婦(カップル)のこころのズレと不妊カウンセリング」
1)夫婦の行動からみたこころのズレ
中部大学生命健康科学部保険看護学科
2)不妊外来における患者の心理を通して考える
虎の門病院 産婦人科
3)「立会い胚移植」前後の夫婦の意識調査(アンケート調査の結果から)
筑波学園病院診療部産婦人科リプロダクションチーム
4)ART治療と夫の心理~アンケート調査の結果より~
…
例年どおりの盛り沢山の内容で、大変に勉強になりました。
これだけの内容なので、この場にすべてを記載するのは無理がありますし、感想は書き切れないと思います。
印象に残ったことは、名古屋大学の医学部の教育では、患者さんとのコミュニケーション教育に力を入れていて、若手の先生たちは大変に能力が素晴らしく、話もきちんと聞けるので、結果的に診療時間が短くなっていること。
(これは、薬剤師が足りない分野だと思いますので、とても参考になりましたし、私も心がけていきたいと思いました)
また最後のシンポジウムは、不妊治療に対する男女の性差(ジェンダー)に関して、アンケートなどを通して、夫婦の心のすれ違い、揺れ動き、そして愛情などについて語ったものですが、語り合った後に、今回の座長の豊橋市民病院の安藤先生が「愛情の反対は無関心と、マザーテレサがかつて言いましたが…」とおっしゃっていまして、個人的に、マザーテレサの映画を見ていて心に残っている言葉なので、今日の一日のテーマ全体もマザーテレサの言葉で腑に落ちたというか、納得がいきました。
質疑応答でも、やはり男性側の立場の意見と女性側の意見は、それぞれのジェンダーの差により、価値観や物事の捉え方が違うようでした。
(私は、やはり男性側の主人の立場から物事を考えました)
余談ですが、日本で一番の出生率が高い県は、福井県だそうです。
三世代同居が多く、共働きも多く、伝統的な価値観のもと、「子どもがいるのが当然」という風習もあって、また不妊専門クリニックには、みな秘密にして通っているそうです。
主人には相談できないで、奥さん一人の考えで、内密に検査を進めて、そこで精液検査の段階では、「主人に言い出し出来ません」といった事例もあるようです。
またある男性医師は、医師自身「婦人科のクリニックを開業したのは良いが、家庭がおろそかになって、帰って寝るだけになっている」「妻は子どもの教育など、私に話したいことがあるはずだ。もっと家庭を大事にしなければならないと、今回のシンポジウムを聞いていてそう思いました。」という意見がありました。
続いて安藤先生から「最近は、医師からタイミングを指示されて、そのときだけ夫婦生活をすれば良いと考えているカップルが多いです。私は、最近は口を酸っぱくして、昔は子どもをつくるときには、血がでるくらいまで、頑張って子作りをしたものだ。と患者さんたちにも言っていて、基礎体温表は、夫婦生活の○で埋めるくらいの努力をしてください」とも意見もありました。
最後に「結局は、夫婦が一緒にいる時間が長ければ、お互いにどんな治療をしているか分かるし、思いやりが生まれてくるものだ」と、話がまとまって一日が終わりました。
最後の質疑応答は、マラソン大会のような不妊カウンセリング学会を締めくくるには、ふさわしい内容でした。
<虎の門の1号線から眺める東京タワー。私は東京タワーが好きです>