新年明けましておめでとうございます!
薬剤師、不妊カウンセラーの土屋幸太郎です。
本年もどうぞよろしくお願い致します。
漢方相談も多くのお客様にご愛顧頂きまして、
本年も頑張っていこうと張り切っています。
さて、新春早々ですが遠藤周作さんの「沈黙」、
大岡昇平さんの「野火」に引き続き、
大作を読みきりましたので恒例の感想文を書きたいと思います。
今回は、また大岡昇平さんの作品で「俘虜記」です。
約500ページくらいある分厚い文庫本ですが、
もともと戦記が好きなこともあり、読み切ることができました。
最後のほうの終わりの文章も戦記らしい終わり方で、
好感を持ちました。
京都大学仏文科卒業のインテリの35歳という
中年にさしかかった年でフィリピンに「死」を覚悟して乗り込んだ
大岡さんの人生が書かれています。
5年の期間にそれぞれの作品を書き上げ、
1冊の単行本として成り立っています。
この本を読んだきっかけは、村上春樹さんの「若い読者のための短編小説案内」の長谷川四郎さんの作品の解説のところで触れられていたからです。
村上さん曰く「俘虜記は、どうしても書きたい意思があった作品」と誉められていましたので、気になって挑戦したのでした。
~
確かなのは私が米兵が私の前に現れた場合を考え、
それを射つまいと思ったことである。
変も加えはしない。
ただ私に射たれた米兵の運命を変えるだけである。
私は生涯の最後の時を人間の血で汚したくないと思った。
米兵が現れる。
我々は互いに銃を凝して立つ。
彼は遂に私がいつまでも射たないのに痺れを切らして射つ。
私は倒れる。
彼はこの不思議な日本人の傍に駆け寄る。
この状況は実にあり得べからざるものであるが、
その時私の想像に浮かんだままに記しておく。
私のこの最後の道徳的決意も人に知られたいという望みを隠していた。
私の決意は意外に早く試練の機会を得た。
「俘虜記」 大岡昇平 新潮社 28~29ページより引用させて頂きました。
ありがとうございました。
日本兵は捕虜になることを恥ずかしいことと考えていた、
そのように教育されていましたので、
この「俘虜記」自体が貴重な経験または小説と言えると思います。
日本人の誇りを持って、私も生きていきたいです。