十字になった町のかどを、まがろうとしましたら、向うの橋へ行く方の雑貨店の前で、黒い影やぼんやり白いシャツが入り乱れて、六七人の生徒らが、口笛を吹いたり笑ったりして、めいめい烏瓜の燈火を持ってやって来るのを見ました。
その笑い声も口笛も、みんな聞きおぼえのあるものでした。
ジョバンニの同級の子供らだったのです。
ジョバンニは思わずどきっとして戻ろうとしましたが、思い直して、一そう勢よくそっちへ歩いて行きました。
「川へ行くの。」
ジョバンニが云おうとして、少しのどがつまったように思ったとき、「ジョバンニ、らっこの上着が来るよ。」さっきのザネリがまた叫びました。
「ジョバンニ、らっこの上着が来るよ。」
すぐみんなが、続いて叫びました。
ジョバンニはまっ赤になって、もう歩いているかもわからず、急いで行きすぎようとしましたら、そのなかにカムパネルラが居たのです。
カムパネルラは気の毒そうに、だまって少しわらって、怒らないだろうかというようにジョバンニの方を見ていました。
宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」より
…
昔、劇団わらび座の銀河鉄道の夜の花巻公演の舞台で子供たちが暗闇の中に、烏瓜の灯りを持って集団で移動するシーンがとても印象的でした。
今年は家の近所で烏瓜の花を見つけることができましのたで、今朝、観察に行きました。
そうしたら、どうでしょう!
烏瓜の実がなっていました。
<2015年9月1日 神町>
烏瓜の実でした。
けっこう朝から感動しました。
こんな感じのブロック塀に何気なく実がついています。
注意しないと簡単に通り過ぎてしまいますよ。
ちなみに烏瓜の可憐な花はこうでした。
<2015年8月19日撮影 同所>
季節は夏から秋に一歩ずつ確実に歩みを進めています。
また烏瓜の実を観察に行きたいです。