「無排卵性月経(無月経)と漢方薬・生理不順への漢方的考察」
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こんにちわ、薬剤師、不妊カウンセラーの土屋幸太郎です。
昨夜は午後8時から10時まで、月に2回行われる「中医不妊症漢方専門講座エキスパート・コース」の「テレビお茶の間漢方講座」の今年の最終回でした。
先生方は、九州とか東海、北陸や四国など、各地からギンガネットのテレビ電話システムで中医漢方講師の先生を中心にして、症例を持ち寄って漢方勉強会を開きます。(私は、南東北代表です)
昨日の中医不妊症、漢方症例検討会では、34歳のかたの無排卵の漢方弁証についてでした。
159cmで42kgのかたで、ダイエットのためにかなり運動をしていました。
エアロビや筋トレ、水泳などです。
そのため、2年前に生理が止まってしまいまして、今現在はホルモンを使わないと生理がこない状態になってしまいました。
以前の周期は、30~40日だったのですが、今は無排卵です。
寒がり、冷え性でもあります。
基礎体温は、一層性でかなりのギザギザです。
病院では、3周期ほどカウフマン療法も行っています。
カウフマン療法とは、もともとの女性の周期に似せて、外部より性ホルモンを投与することにより、体全体の調子を整えることです。
具体的には、消退出血(生理のこと)後約10日間のエストロゲン単独投与の後に、約12日間のエストロゲン+プロゲステロン投与を行います。
投薬終了後には生理が起きますが、これを1クールとして一般的には約3クールの治療を1セットとします。
女性の月経周期には、大きく2つの意味があります。
一つはエストロゲンの分泌で、もう一つは排卵することです。
エストロゲンの分泌が少なければ、子宮内膜増殖など体全身に影響を及ぼしますし、排卵がなければもちろん妊娠できません。
したがって西洋医学での月経の調節は、挙児希望がなければ血中のエストロゲンレベルを上昇させることであり、挙児希望があれば排卵誘発のための手段を考えることになります。
一方、中医学的な月経の調節は、体の本来のリズムやバランスを取り戻すことにありますので、ホルモンバランスも活発化してきます。
女性の本来あるリズムの卵胞の発育や排卵、月経などが戻ってきます。
(しかし疾患によって、もちろん漢方薬だけでは効果が弱いので、西洋医学的な治療との併用になります)
さて難しい解説がずいぶんと長くなりましたが、この女性のかたは、病院で黄体ホルモンを使うと生理が来ますが、止めると再び停止してしまいます。
クロミッドを一度使いましたが、なかなか反応しませんでした。
1日3錠の服用でやっと卵胞ができましたが、多嚢胞性卵胞と言われました。
つぎに、HMG―HCGでの治療を行いましたが、心配になって治療を中止し、その後生理が完全に止まってしまったそうです。
検査では、女性ホルモンの数値が全体的に少ないです。
勉強会では、各先生方の意見が述べられました。
その中で私が印象に残ったこと、勉強になったことを記しましょう。
女性の先生の意見
「生理が来ないことは、ストレスです。
私の漢方薬局では、無排卵の状態から妊娠している人がいます。
一人のかたは、159センチで39kgで、4ヶ月かけて健脾(胃腸を丈夫にすること)、滋陰養血の漢方薬で体調を整えました。
結果、本格的な漢方周期療法に入る前に妊娠できました。
もう一人のかたは、163センチで49kgでした。
漢方薬で体づくりをしていきました。
3ヵ月後には、無排卵の月経が起こり、1年後にはきちんとした排卵の生理が起こりました。
通常3~6ヶ月間の漢方の服用で、無排卵の月経が治ってきます。(もちろん、信頼関係が無ければ、そこまで続きませんが)
漢方薬の服用だけでも、妊娠している人がいらっしゃいます。
漢方的には、婦宝当帰膠や参茸補血丸、弓帰調血飲第一加減などで体調を整えていきます。
また食欲を出して、体脂肪や体重を増やすには、消化を良くして食欲に良い晶三仙(しょうさんせん)や星火健胃錠、補中益気丸などを弁証に応じて使い分けていきます。
このように痩せているタイプのかたには、体重と体脂肪がキーポイントになります。
赤ちゃんが欲しいのならば、太らなくてはいけません。
だんなさんは、男ですから、赤ちゃんを産めませんので、あなたが健康になるのが大切です。」
お客様の健康管理として、「食事日記」のような感じで食べたものを書いてきてもらうこともあるそうです。
もう一人の女性の先生の意見も紹介しましょう。
「基礎体温がギザギザです。
肝欝気滞(かんうつきたい)だと思います。
過度のストレスの負担が胃腸にかかっていると思います。
「肝強脾弱(かんきょうひじゃく)」の状態です。
ストレスを和らげますと、胃腸の働きも良くなりますので、星火逍遥丸は体脂肪にも良くて無排卵月経にも効果的でしょう。
炒麦芽も基礎体温のギザギザに良いでしょう」
なるほど、ごもっともな意見です。
途中の意見としましては、この方は婦宝当帰膠の甘い味が苦手で服用できなかったそうですから、「ダイエットを意識していて、本当は婦宝当帰膠にはカロリーがほとんど無いのに、甘さのカロリーが怖くて服用できないのではないか」などというコメントもありました。
女性の立場でしたら、痩せていると自分ではスマートだと思っているが、実は男性側からは魅力が無く写っている。
丸みは本来の女性らしさですから、男性には魅力的に見えて、その結果愛が始まり妊娠するのではないか、、などと素晴らしい発言もありました。
中医漢方の無排卵への対応策を最後に紹介しましょう。
①補腎、養血、活血を用いて、体調を整える。
たとえば婦宝当帰膠と冠元顆粒などの漢方薬にプラス補腎薬です。(たとえば参茸補血丸など)
これらの活血補血補腎薬で、生理が来るようになったら、「漢方周期療法」を導入する。
②上述の薬を2週間服用する。
次に、活血剤を5~7日間投与する。
これを繰り返すことにより、生理を起こしていく。
③中成薬で、周期的に漢方薬の服用を変えていき、からだにリズムを覚えさせる。
以上のような方法があるとのことでした。
最後に、中医師の先生の症例を紹介します。
「クロミッドを使っても卵胞はほとんど発育しなかった。
HCG-HMGに変えたが、卵巣が正常の3倍まで腫れて腹水もでた。
ホルモン療法を止めて、漢方周期療法を始めた。
半年間続けた結果、体質改善して、クロミッドで反応して排卵するようになりました」
そのような訳でして、昨夜は山形の自宅に居ながら、全国をギンガネットで駆け巡った漢方の勉強をしていました。
無排卵でお困りの方で近くに適切な漢方薬局がない場合には、当店までご相談してください。
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<注釈>
この方の場合には、続発性無月経(一度はあった月経がこなくなった)に分類されます。
続発性無月経も原発性無月経と同様に、どこに原因があるかによって、視床下部性、下垂体性、卵巣性、子宮性に区別されます。
視床下部性と下垂体性を合わせて中枢性無月経ということもあります。
続発性無月経の原因となる主な疾患や状態には以下のようになります。
<視床下部性無月経>
〇体重減少性無月経
過度なダイエットや拒食症などの現認により、3~6カ月でもとの体重の15~20%以上減少して無月経となるもののことをいいます。
飢餓状態であるため、脳の視床下部からのGnRHの分泌が低下します。
そのため、それに反応するLH、FSHも低下し、さらにエストロゲンとプロゲステロンも分泌が不全となるため、無月経となります。
また、エストロゲンが不足すると骨の量も減少するため、無月経である期間が長いと、骨密度が低下して骨粗鬆症の原因ともなります。
食習慣をなおし、体重を回復させることです。
月経の回復のためには体重増加も大切です。
<下垂体性>
〇高プロラクチン血症
プロラクチンは乳汁分泌をおこすホルモンであるため、妊娠、分娩、産後の時期には多く分泌されますが、それ以外の時には正常であれば分泌されないように調整されています。
ところが、何らかの原因でこのプロラクチンが異常に多く分泌されると下垂体からのLH、FSHなどのホルモンがあまり出なくなります。
そのため、エストロゲンやプロゲステロンの分泌が低下し、無月経の原因となります。
プロラクチンが異常に多く分泌される状況としては、下垂体腫瘍や、抗鬱剤などの薬剤性、甲状腺機能低下症などがあります。
〇運動性無月経
強い精神的や身体的ストレスが多いスポーツ選手などにみられます。
過度な運動がホルモンの状態に影響して無月経になります。
プロラクチンが過剰に出たり、脳からのホルモンのLH、FSHの分泌不足のために無月経となると推測されています。
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では、最後に山形の近況をお届けしましょう。
12月9日撮影です。月山です。
今年の山形の天候は、暖冬です。
まだ初雪は観察されていません。
透き通るような月山ですね。
この月山を眺めていて最近気が付いたことは、「月山が眺められる人生」と「月山が眺められない人生」の2つあるということです。
月山を眺めていると、幸せを実感します。
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2012年2月10日 追伸です。
嬉しいお知らせは、漢方体験ドットコムにもあります。
「無排卵でしたが、漢方やってみてとても良かったです!」